虹の音


…思ったよりうまくできた。


味見をしてそう思った。

時計を見るとすでに20時。

慣れない料理に手こずってしまった。


――ガチャ。

玄関のドアが開く音がした。


お父さんが帰ってきたんだ。


「…なんだ、このにおいは」


お父さんはただいまも言わず家に入ってきて、リビングに来て顔をしかめた。


「…作ったの、夕飯」

「は…お前が?」


お父さんは意外そうな顔をして、あたしのうしろにある鍋を見た。


「お父さんも…食べる?」


…思い切って聞いてみた。

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