つむじ風。

そのネックレス、おまえにやるよ、リサ。
別に誰にやるでもなく、買ったものだからな。

完全に気分を害したリサは、今まで溜まっていたうっぷんを晴らすかのように、博子のことをなじり始めた。

「その女もいい度胸してるよね」と。

「外では亮二に会って、
家に帰れば旦那に抱かれて」と。

…ああ、そうだったな。

確か、おまえの旦那、加瀬…達也、とかいったな。

おまえも女だ、そして妻だ。
旦那に抱かれることくらい、普通のことだ…。


俺はリサの部屋を出た。

その途端に、
急にその男が羨ましく、
いや妬ましくなった。

なぁ、博子。

おまえを堂々と愛せるやつがいる。

後ろ指をさされることなく、
おまえを抱きしめられるやつがいる。

俺とは違って、
そいつは、おまえの全てを奪い尽くせる…


いつか踏み潰した、
自分に似た小さな風を、思い出した。

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