つむじ風。

しばらくしてだった。
1本の電話に俺は耳を疑った。

『亮二さん!大変です。
あの加瀬って女が、男と一緒にAGEHAに入っていきました』

「リサの仕業か」

『ええ、おそらく』

「わかった、すぐに行く」

車でAGEHAの前に乗り付けると、俺は直人と浩介を連れて裏口へとまわった。

「確かか?」

「はい、間違いありません」

あの女…

心の中で舌打ちすると、音を立てないように扉を開ける。

ホールからリサの甲高い声が聞こえる。

俺たちは声のするほうに足早に向かった。
その途中突然、パシンッという乾いた音が耳に届く。

そしてリサのわめき声。

「おい」
そう言って出て行こうとした時、
うずくまった女の口が開いた。

「亮二さん、早く止めないと」
浩介が声を押し殺して急かす。

「待て」
俺は隠れるようにホールをうかがった。

女は続ける。

「新明くんは絶対にそんなことしない」

「なんなのよ、あんた!」

わなわなと震えるリサの後ろ姿で、
肝心の女の表情が見えない。

…博子…

「彼は絶対にそんなことしない!」

その言葉に、リサが手を振り上げた。

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