つむじ風。
「そのへんにしとけよ」
俺は手をヒラヒラさせながら、ホールに足を踏み入れる。
驚いたリサと、おまえの顔がふたつ。
片方だけ赤く染まった頬が痛々しい。
「俺の取り合いかよ」
リサが俺に抱きついたのを見て、
おまえは目を伏せた。
そんなリサを引き離し、おまえの前に立つ。
「怪我はないか」
すまない、こんな目に遭わせて。
立ち上がるように手を差し伸べるが、
おまえは震える声で、
そして訴えるように訊いた。
「嘘、よね?」と。
「警察情報をとるために会ってたなんて、嘘よね?」と。
半分嘘で、半分本当だ。
だが、今ここでそんなことを言って何になる。
余計におまえも苦しくなるだろ。
「嘘じゃねぇよ」
それでもおまえは信じようとしなかった。
なぁ、博子。
おまえは真っ直ぐすぎる。
俺に対する気持ちが清らかすぎる。
もうあれから、何年経ったと思ってるんだ。
「私の知ってる新明くんは…
そんなことする人じゃない」