つむじ風。
…なんだって?
その言葉に、全身が熱くなった。
「おまえの知ってる、俺…?」
おまえが俺の何を知ってる!?
何も知らないだろ!
おまえと離れて、どれだけ辛かったか、
兄貴とおふくろを捨てた悲しみがどれほどか、
ひとりで生きてきた苦しみがどれほどか、
罪悪感に苛まれる気持ちがどんなものか…!
おまえは全部知ってるって言うのかよ!!
わかったようなこと言ってんじゃねぇ!
「俺はどんなやつだよ、言ってみろよ!
なぁ言えよ!!」
内から沸いてくる悔しさと怒りが
どうしても抑えきれなかった。
そばにあったスツールを思いっきり蹴り倒す。
博子!
教えてやるよ、俺が今まで何をしてきたか。
俺は過去の悪行をすべてぶちまけた。
その間、おまえはその瞳で俺を見つめていた。
決してそらすことなく。
やめろよ、そんな目で見るな!
そんな視線が苦しくて
俺は憎たらしいほどに悪態をついた。
おまえの「信じてる」と言っていた瞳がみるみる曇っていく。
「おまえは正義を振りかざすのに忙しい旦那の帰りを待ってるんだろ。そんなヒーローに抱かれてるんだろ!」
その一言に、目の前の女の顔がひきつる。