つむじ風。

「俺は見ての通り、悪に染まった暴力団の幹部なんだよ」

「もうやめて!」

とうとうおまえは目を固く閉じた。

「俺のやってきたこと、まだ教えてやろうか」

たたみかけるように、俺は言う。

「やめて!もう聞きたくない!」


わかったろ?
これが本当の俺なんだよ。

がっかりしただろ?
そうやって泣くくらいだもんな。


「浩介、連れていけ」

おぼつかない足取りで、おまえは背を向けた。

「博子」

振り向きはしない。


「巻き込んで、悪かった」

これだけは本心だ。


傷付けてしまって、申し訳ない…

もうお前の前には現れない。

全て忘れて、幸せに暮らせ…
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