つむじ風。
俺はイライラしていた。
自分でも理由はわかっていた。
おまえを元の生活に戻すことを望んだのに、それとは逆の想いが消えなかった。
またおまえを失ってしまった、
その思いが俺を支配している。
そのはけ口が、下の連中への怒りとなる。
直人が言った。
「このままでは、下の者も付いてこなくなります」と。
わかってる。
俺が今、自分を見失っていることくらい!
なぁ、博子。
俺はガキだな。
望んで手離したはずなのに、
今さら恋しくて仕方ないなんてな…
8月3日。
その日は、親父の命日だ。
「今から出掛ける。今日は誰も俺に連絡を入れるな。
何かあれば、直人か浩介に言え」
「それが、朝からずっと連絡がとれなくて」
「ふたりともか?」
「はい」
「何やってんだ、あいつら!」
またしても苛立つ。
「わかった、緊急の時は俺に電話しろ。
あのふたりと連絡がとれ次第、事務所につめるように伝えておけ」