つむじ風。
冷えた缶ビールを2本、
小さなビニールに入れ、俺は土手を歩いた。
夕方6時前だというのに、まだ日が高く暑い。
風も生暖かく、決して気持ちのいいものではない。
こんな暑い日に、
親父は俺の誕生日プレゼントを探し歩いたんだな…
毎年同じことを思う。
俺はテニスコート脇のベンチに腰かけた。
プシュッという心地いい音をたてて、缶ビールをあける。
俺はそれをあおるように飲み干した。
後悔、嫉妬、焦燥感…
あらゆる感情が入り乱れる。
オレンジ色に空が染まる頃、
不意に背後から声がした。
「花火大会、8時からよ」
煙草を吸う手が止まる。
心の中で舌打ちした。
バカやろう!
なんで、ここにいるんだよ!
「ご親切にどうも」
平静を装ってそう返す。
もうこれ以上俺の心をかき乱さないでくれ!
「何しに来たんだよ。
また騙されたいのかよ」
おまえの方を振り返る勇気がない。
俺は最低の男なんだって、まだわかんねぇのかよ。
おまえを利用したんだぞ。
風が1つ、俺たちの間を吹きぬけた。