つむじ風。

冷えた缶ビールを2本、
小さなビニールに入れ、俺は土手を歩いた。

夕方6時前だというのに、まだ日が高く暑い。

風も生暖かく、決して気持ちのいいものではない。

こんな暑い日に、
親父は俺の誕生日プレゼントを探し歩いたんだな…

毎年同じことを思う。


俺はテニスコート脇のベンチに腰かけた。

プシュッという心地いい音をたてて、缶ビールをあける。
俺はそれをあおるように飲み干した。

後悔、嫉妬、焦燥感…
あらゆる感情が入り乱れる。


オレンジ色に空が染まる頃、
不意に背後から声がした。

「花火大会、8時からよ」
煙草を吸う手が止まる。

心の中で舌打ちした。

バカやろう!
なんで、ここにいるんだよ!

「ご親切にどうも」
平静を装ってそう返す。

もうこれ以上俺の心をかき乱さないでくれ!

「何しに来たんだよ。
また騙されたいのかよ」

おまえの方を振り返る勇気がない。

俺は最低の男なんだって、まだわかんねぇのかよ。
おまえを利用したんだぞ。

風が1つ、俺たちの間を吹きぬけた。

< 108 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop