つむじ風。
「さっきね、橘さんと坂井さんという人が会いにきてくれたの」
…あいつら!
だから連絡とれなかったのかよ。
「あなたのことを誤解しないでくれって」
…勘弁してくれよ。
俺の決意が水の泡じゃねぇかよ。
「余計なことしてって思ってるでしょ」
思ってるよ、あのバカどもが!
「毎年、8月3日はここに来てたの?
お父さんの命日だから…?」
…ああ、そうだ。
ここで親父を弔ってた…
俺は振り返った。
おまえは何でもお見通しなんだな…
初めてだった。
何のしがらみも、何の邪心もなく
おまえと見つめ合ったのは。
立場を超えた、
ただの一人の男と
ただの一人の女。
その瞬間、
光と闇の世界をつなぐ、細くて脆い架け橋に、
俺たちは一歩を踏み出してしまった。
危険だとはわかっていた。
でもその橋を渡らずにはいられなかった。
夜空に弾ける花火の音だけが聞こえる。
色とりどりの華を想像しながら…
俺たちの15年前に途切れた想いが、
また息を吹き返す…