つむじ風。
「悪かったよ。
いい加減、機嫌直せよ」
俺は先に歩くおまえの背中に向かって、謝った。
ぴたりとその足が止まる。
俺もおまえとの距離を保ったまま、足を止めた。
「…嫌だったの、あんなふうに言われたのが。なんだか茶化されてるみたいで…」
俺があの瞬間に声をあげたことを言っているに違いなかった。
「別に茶化したわけじゃねぇよ。
でもそれでおまえを不愉快にさせたのなら、謝る」
「…私の方こそ、ごめんなさい。
つまんないことでいつまでも…
たったあれだけのことで…って思うでしょ?」
「思わねぇよ」
「いいのよ、無理しなくて。
私みんなにガードが固すぎるって言われるの。
明治時代の女の人みたいって」
そう言って、肩を揺らした。
後ろ姿で、表情まではわからなかったが、
笑っているのは確かだった。
「またえらく古臭い女に喩えられたな」
「でしょ?新明くんもそう思う?
私って時代遅れ?」
「…思わねぇよ」
「…いいのよ、無理しなくても。
でもね、ああいうのは嫌なの。
私だって恥ずかしいんだから、見て見ぬふりをしてほしかった」
「…悪かった」