つむじ風。

ホテルの部屋を出る時にも、女の価値がわかる。

自分は客で、泊まってやってるんだ、
そんな意識のある女は、
ベッドや洗面台など、これっぽっちも整えて出ようとは思わない。

俺の舎弟で、ホテルを経営する男が言っていた。

ランクの上の部屋に宿泊する客のほうが、
部屋をきれいに片付けてチェックアウトをする、と。

逆にそうでない部屋は、目を覆いたくなる状態だそうだ。

これも日頃の心がけがなせるわざだ。

女というのは、その心がけが行動に出やすい生き物だ。


そして、俺はこの上もなく損な男だ。

ほんの一瞬の女の言動に、興ざめしてしまうからだ。

そうさせたのは、博子、おまえだ。
おまえのせいで、俺は女を見る目が昔から肥えてしまっていた。


今、目の前にスカートを押さえたまま、
俺を睨むおまえがいる。

「見た?」

「何を?」

「…ううん、なんでもない」

バカが、二度も同じ失敗するかよ。
と、心の中でほくそえむ。


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