つむじ風。
俺が空を見上げた時
オレンジの空に
昔おまえが真顔で言った、「羊雲」が広がっていた。

俺には
おまえしか見えない。

でも言えねぇんだよ。

どうしても…

言えばおまえを束縛したくなる。

「マネージャーのことが聞きたいのかよ。
おまえの言う通り、かわいいよ」

「…そう、よかったね…」

そんな顔すんなよ。

思わずため息が出る。

おまえにも
俺にも

もどかしさを感じて。


「おまえも来年、うちの高校の剣道部に入るんだろうが」

「え…」

「ちゃんと勉強しろよな」

そこまで言って
やっとおまえは笑顔になった。

こういう言い方しかできない俺。

おい、博子。
早く俺に追いつけよ。

おまえは
いつも俺を待たせてばっかなんだからな。

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