つむじ風。
リサを見つけるのに
そう時間はかからなかった。
クラブに戻れ、という俺に
あいつは試すように言った。
「あたしを抱いてくれたら、店に戻る」と。
AGEHAは圭条会にとっても、大きな資金源だ。
断つわけにはいかない。
俺はリサを抱いた。
ためらいはなかった、といえば嘘になる。
俺は自身の心を凍らせた。
何も考えないように、
何も感じないように。
ただ、組のために…リサを抱いた。
だが、何日経っても、そのことが心に重くのしかかったまま。
俺は、自分が少しずつ圭条会の新明亮二ではなくなっていくように感じていた。
以前の俺なら、なんのためらいもなく、
利用できる女を片っ端から抱いた。
今は違う。
穢れを知らないおまえのあの瞳に、自分を恥じてしまう。
そしてもっと情けない感情。
初めて抱く感情かもしれない。
加瀬達也という男に、嫉妬している…。
無性にその男が気になる。
いつからだろう…
こうやっておまえと心が通い合うようになってからか…?
いや、おまえが結婚していると知ったときから、心のどこかに引っかかっていた。
いつもおまえは俺と会う時、
そいつのことを気にかけている。
当然と言えば、当然のことなのにな。