つむじ風。
「ねぇ、新人戦もうすぐだね。
がんばってね、優勝しちゃって!」

おまえ、俺がどれだけ強いか
まだわかってねぇのかよ。
ったく、バカが。
優勝できなかったら
おまえの言うことなんでもきいてやるよ。

その俺の言葉に
おまえは戸惑っただろ?
振り向くと、なぜか困った顔をしてた。

でもごまかしたように
いつもの笑顔になる。

俺に何をしてもらいたいんだよ?
そんな顔をしなきゃいけないことなのかよ?

問い詰められなかった。

おまえはその時、髪を撫でていた。

気付いてたか?

それはおまえの「クセ」だ。

困った時や、照れた時にその仕草が出る。

顎のラインできれいに揃えられた黒髪は
夕陽で金色に輝いていた。

その大きな黒い瞳にも
沈んでゆく太陽が映ってた。


なぁ、博子。

笑ってろ。

おまえには
ずっと笑っててほしい。

心からそう思った。

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