つむじ風。
俺が高1のバレンタインだった。

受験勉強の追い込みで
それどころじゃないはずのおまえ。

なのにチョコをわざわざ作って
俺に渡そうとした。


勉強しろよ。
こんなことする暇があったらよ。

落ちたら許さねぇからな。

しかもおまえ
「義理チョコ」って言いやがった。

素直じゃねぇな。

「いらねぇよ」
俺はそう言った。

「義理」っていう言葉が気に入らなくて。

俺も素直じゃねぇな。

なのにおまえは
無理に俺の鞄にそのチョコをねじこもうとした。

「ちっ…」

鞄から、色とりどりの包装紙で包まれたチョコがいくつか落ちてきた。

あーあ、見られちまったな…

おまえの瞳が揺れていた。

しゃがんでそのチョコを拾い集める博子。


「こんなにあったら食べきれないよね」


そんなふうに言うなよ。


「たくさんもらえて…よかったね」


思ってもないこと、言うなよ。


立ち上がったおまえはやっぱり髪を撫でた。
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