つむじ風。
「私のはどうせ義理チョコだから
お父さんにでもあげようかな」
おまえは待っていた。
俺が何か言うのを。
でも、言葉が出てこないんだよ。
「おい!待てよ!」
おまえは振り返りもせずに
走っていった。
待てよ。
もうちょっと待てよ。
俺だって言葉を探してるんだ。
ちょっとくらい待てるだろ…
後を追った。
頬に当たる風が
痛いくらいに冷たかった。
ちくしょう…
あいつ足、速いな…
結局おまえを見失って
俺は小さな公園のベンチに座った。
空には星が点々と散らばっている。
ったく…
自分が嫌になる。
こんなことになっても
明日になればおまえは何事もなかったかのように、俺に笑いかける。
そんな博子に…
俺は甘えている。
頭を抱えた。