つむじ風。
第5章~風のゆくえ~
加瀬博子との警察情報漏洩疑惑は、
湊川リサの別れた男に対する腹いせとして片付けられた。
売春斡旋に俺が関与したという証拠もなく、
圭条会本部事務所の家宅捜索も免れた。
林さんは、その報告を聞き、
ほっと胸を撫で下ろす。
だが、俺には次の仕事が待ち受けている。
圭条会のフロント企業である大和建設に、県発注のダム建設事業を請け負わせること。
これが成功すれば、莫大な利益となり、組の資金は潤う。
そして俺の地位はますます確固たるものになる。
俺はダム建設発注を担当する部署の責任者を、徹底的に調べさせた。
生い立ち、学歴、家族構成はもちろん、
趣味、乗っている車、月々のローンの返済額、好みの女のタイプまで、すべて。
まず大和建設との接触を取り持ちながら、
金の威力をみせしめる。
そして、家計の援助を持ちかけたところで、
懇意にしている県会議員の倉田に一押ししてもらう。
いや、ここまでくれば、「脅し」と言ったほうが適当だ。
その倉田には何社もの企業を経由して、献金という目的で、多額の金が組から流れている。
腐った世の中だ。
だがそれをうまく利用しない手はない。