つむじ風。

「亮二、ヘマすんなって言ったよな」

林さんは舐めるように俺の顔を見る。

「申し訳ありません。
覚悟は、できています」

俺はそう言った。

そう言うしかなかった。

リサの件に始まり、そして今、
公共事業における圭条会の贈収賄疑惑。

「なんだ、その目は」

林さんの言葉に、信州のあのクソ伯父の顔が重なり、体が硬くなる。


「本当に、申し訳…ありませんでした」


ガツンッ!


鈍い音が左の耳元でしたかと思うと、衝撃が走る。

一瞬にして目の前が暗くなり、
そして真っ白になった。

殴られたのだとはすぐにわからなかった。

視界は完全に利かない。

自分が床に倒れているという認識はあったが、体がどうやっても動かない。


遠いところで浩介の声が聞こえる。

「おまえら!亮二さんに世話になってんのに、
なんで平気で見てられんだよ!」と。

いいんだ、浩介。

これがこの世界…
いや、林さんが作った掟だ。
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