つむじ風。
ふと目の端に
見覚えのある小箱が。

……

公園のゴミ箱に近付く。

「マジかよ…」

俺はそれを拾い上げた。

「…捨てなくてもいいだろ」

おまえを探してあたりを見回すが、
いるはずもない。


なぁ、博子。
こんな俺にうんざりするだろ。

俺と一緒だと
ずっとこんなことの繰り返しだぞ。

俺の足元で
小さなつむじ風が舞っていた。

枯葉をカサカサ震わせて…

臆病な風だと思った。

どうせ同じ風なら

好きな女の頬を撫で
あの黒髪をかき乱し
すべてを奪ってしまうような
激しく勢いのある風になればいいものを。

それなのに

こんな片隅で
誰にも気付かれずに舞っている。


まるで、俺だ。


おまえを包み込む勇気も
おまえのすべてを受け止める
そんな勇気もない。

ただの臆病者だ。

なぁ、博子
どうしたらいいんだよ…
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