つむじ風。

「…違います」

「隠すなよ」

それから総長は、俺なんかに自らの体験を語りだした。

「その女と知り合って、
ガラにもなく、これが最後の恋だと思ったよ」

「……」

彼の言葉のひとつひとつが…
俺の心に重なる。

「俺にはこいつしかいないってわかってたのに、手離してしまった。
後悔したよ、気が狂いそうなほど後悔した」


…俺はあなたと同じ「道」を辿っている…


「不思議なもので、自分と同じ匂いのするやつは、すぐにわかる」

彼は俺にチャンスをくれると言った。

組のために、そして総長である自分のために命を賭ける覚悟があるのなら、ゆくゆくは圭条会のトップにしたやろう、と。

そのためには、
未練も心の迷いも、全て捨ててこい、と。


俺は下唇を噛んだ。

ジンジンと痺れるくらいに。


トップに…

考えたこともない、と言えば嘘になる。

男である以上、頂点を目指したいと、
誰しもそう思う。

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