つむじ風。

「返事は今夜ここで聞こう」

総長のもとを去る時に
俺は気になっていたことを尋ねた。


「先ほどのお話の女性とは、
その後どうなったのか、教えていただけませんか」


自分の恋の結末を知りたい衝動に駆られた。

総長の若かりし日の恋を辿るような、
俺のこの想い。

きっと俺の恋も、
この人と同じような終わりを迎えるのだろう、と。


彼は眉間に深い皺を寄せ、
目を硬く閉じた。

「何年かして会いに行ったよ。
当然だが、違う男と結婚してたよ。
俺へのあてつけのように…」


次の言葉を発した総長の声は、
いつも以上にかすれていた。


「刑事と結婚してたよ」


ああ、この人は、
今でもその恋を、忘れてはいない。


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