つむじ風。

リビングのドアを開けると、
直人と浩介がビクッとしたように、ソファーから立ち上がった。

「り、亮二さん」

「どうした、こんなとこで」

「亮二さん!」

浩介が目にいっぱい涙を溜めて、俺に抱きついてきた。

「どうしたもこうしたもないっすよ!
心配してあちこち探し回ったんですから!」

俺を…?

「…よかった」

直人も緊張が解けたかのように、
何度も顔を撫でる。

おまえら…

「亮二さぁん!」

「わかった、わかったから離れろ」

かわいいやつだ。
おまえらだけは俺についてきてくれるのか?
こんな俺に?

「すまなかった、心配かけて」

俺は、二人の顔を交互に見て言った。

「座れ、話がある」


それから、俺は総長の申し出を受けるつもりだ、と二人に告げた。

林さんは俺を見限った。
行くところはもうない。

こうなった以上、目の前に差し出されたチャンスに賭けたい。

ただし、危険な賭けだ。
失敗は許されない、と。

< 164 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop