つむじ風。
あれは俺が中3の秋の文化祭。
俺はいつものように校門前で待っていた。
くそっ、寒いな…
「ねぇ、新明くん」
その声に
「いっつも遅せぇんだよ」
と言いながら振り返る。
するとおまえは鞄を小脇に抱え、
小さな白い器を両手に一つずつ持って、
そろりそろりと歩いてくる。
「家庭科部の友達がね、出し物でお汁粉やったんだけど、少し余ったって言うから、もらってきちゃった。食べるでしょ?」
そう言って、持っていたひとつを押しやってきた。
「どこで食うんだよ、こんなもん」
「道場の脇に古いベンチがあったでしょ?あそこで食べよ」
俺たちは大きなイチョウの下のベンチまで来たが、座面は黄色の葉で完全に覆われていた。
俺が面倒くさそうにそれらを払いのけると、その様子をじっと見つめるおまえ。
「私の座るところもお願い」と言わんばかりの視線。
…わかってるよ
俺たちは腰かけて、
その真っ黄色の大木を見上げる。
溜息が出るほど綺麗だった。
黄色の葉の合間から、
赤ともオレンジとも言えぬ、不思議で神秘的な色の空が垣間見える。
「あったかいうちに食べよ」
そう言って、おまえは箸を差し出す。