つむじ風。

あれは俺が中3の秋の文化祭。

俺はいつものように校門前で待っていた。

くそっ、寒いな…

「ねぇ、新明くん」

その声に
「いっつも遅せぇんだよ」
と言いながら振り返る。

するとおまえは鞄を小脇に抱え、
小さな白い器を両手に一つずつ持って、
そろりそろりと歩いてくる。

「家庭科部の友達がね、出し物でお汁粉やったんだけど、少し余ったって言うから、もらってきちゃった。食べるでしょ?」

そう言って、持っていたひとつを押しやってきた。

「どこで食うんだよ、こんなもん」

「道場の脇に古いベンチがあったでしょ?あそこで食べよ」


俺たちは大きなイチョウの下のベンチまで来たが、座面は黄色の葉で完全に覆われていた。

俺が面倒くさそうにそれらを払いのけると、その様子をじっと見つめるおまえ。

「私の座るところもお願い」と言わんばかりの視線。

…わかってるよ


俺たちは腰かけて、
その真っ黄色の大木を見上げる。

溜息が出るほど綺麗だった。

黄色の葉の合間から、
赤ともオレンジとも言えぬ、不思議で神秘的な色の空が垣間見える。

「あったかいうちに食べよ」

そう言って、おまえは箸を差し出す。


< 167 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop