つむじ風。

「それと…ほら、これもあるの」
と小さなビニール袋いっぱいの「塩こぶ」を出してきた。

「なんだよ、これ」

「知らないの?
お汁粉とか、ぜんざいと一緒に食べるじゃない」

「そうだけどよ」

「すいかに塩をかけて食べるのと一緒よ。
これを食べると、おしるこが余計に甘く感じるの。ね、得した気分になるでしょ?」

「俺が言いたいのは、なんでこんなに山ほどもらってくるんだっつうことだよ。
ふつう、ちょっとだろ?
汁粉と塩こぶ、一体どっちがメインなんだよ、このバカが」

「ちょっと多かったかな」

「ちょっとどころじゃねぇだろ」

「そうね、相当多いね」

コロコロと声を出して笑うおまえを横目に、俺は塩こぶをひとつまみ口に入れ、汁粉を含む。

こぶの味が強すぎて、せっかくの汁粉の甘味が台無しだ。

俺はそのまま汁粉を食べるほうが好みだ。

「ほらほら、新明くん。遠慮せずに」
とおまえは意地悪そうな顔で
そのビニール袋を差し出してくる。

「おまえが食えよ」

「あ、私ね、塩こぶなしで食べるほうが好きなの」

このやろ…

「じゃあどうすんだよ、こんなにたくさん」
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