つむじ風。

俺の不機嫌そうな声を全く気にすることなく、おまえは汁粉をすすった。

「あったまるね」なんて言いながら。

しばらくおとなしくしていたおまえが、
いきなり大きな声をあげた。

「あーっ」

「なんだよ」

「新明くんのにだけ、白玉3つも入ってる。
私のは2つだけだったのに」

おまえ…そんなことででかい声出すなよ。

「じゃあやるよ」

俺は箸で白玉をつかんで、おまえの器にポトンと落とした。

「ありがとう、新明くん」

その無邪気な笑顔に、
俺もつられて笑ってしまった。

たかが白玉一つで、笑顔の安売りすんなよ、バカが…

「なに?」

「いや…」
なんでもねぇよ。

「じゃあ、白玉のお礼にこれあげる」

そう言って、塩こぶの入った袋を俺に押し付けてきた。

「いらねぇっつってんだろ」

「だよね」
なんて髪を揺らしながら、おまえは大笑いだ。

俺たちはそのまま暗くなるまでじっと座っていた。

どちらかが

「帰ろう」

そう言うまで…

< 169 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop