つむじ風。


「ねぇ…新明くんはどうして…」

声がかすれて、おまえの言葉が途切れる。

横をチラリと見やると、
うつむいた長い睫毛のシルエットが何度もせわしなく上下に動くのがわかる。

「ううん、なんでもない…」

どうしていつも待っててくれるの?

そう聞こえた気がした。

「……」

「……」

博子、それは
おまえが好きだからだ。

今まで素直になれなかったおまえへの気持ちを初めて打ち明けたい、と思った瞬間だった。

俺にはこいつしかいない、
そう確信した瞬間だった。

その時に膝の上で握りしめた拳が、
やけに熱かったのを覚えている。

でも伝えられなかった。
いや、伝えなかった。
ずっと…

変なプライドばかりが邪魔して…



俺は煙草に火をつけて、何度も立て続けに煙を吐いた。

ああ、わかった気がしますよ。
総長、あなたのおっしゃたことの意味が。

俺はこの気持ちを伝えなければ、
間違いなく、一生後悔する。

それが俺の未練。

そして行き場のない思いに一生悩み苦しむ…

それが俺の心の迷い。


だから、今日、
圭条会のトップになるべく、

俺はそれを全て断ち切る。


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