つむじ風。

ドアを開けると、戸惑ったおまえの顔があった。

急に呼び出して悪かったな…
ああ、でも随分おまえに会っていなかった気がする。

俺はリビングに招き入れると、
あの大きな窓から外を見つめた。

今にも泣き出しそうな空。
あの想い出に輝く河も、今日は霞んでしまっている。

涙雨といったところだな…

残念だな、おまえに見せてやりたかった。
ここから見る夜景もなかなかのもんなんだぜ。

見せてやりたかった…


「覚えてるか」
俺はそう切り出した。

「剣道教室で一番強かった俺がキャプテンになれなかった。
中学では新しい胴着すら買えない貧乏を笑われた」

目を閉じると、あの時の悔しさが今でもまざまざと蘇る。

「実力があってもトップになれない、
金のないやつは見下される。
だから俺は思った。
世の中、金と権力だってな」

吐き捨てるような俺の言葉を受けて、
おまえが体を強張らせるのがわかった。

「今でも思ってる?
お金と権力が全てだって…」

こんな俺を不憫に思うのか?
だからそんな悲しい声をするのか?

「さあ、どうかな」

おまえと再会しなければ、ずっとそう思ってただろうな。

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