つむじ風。

熱い涙が、俺の指先をかすめる。

こぼれたばかりの、おまえの涙。


あの時の俺は逃げた。
おまえに別れを告げることから。

それがおまえをどれほど苦しめることになるか、考えもせずに。

「あの日、何も言わずにいなくなって、すまなかった」

「そうよ!どれだけ私が!」

怒ったその顔が、
涙で潤んだ瞳が、
愛しくて愛しくてたまらなかった。

「博子!」

俺は想いのすべてを込めて、
目の前の女を抱きしめた。

壊れてしまいそうなその華奢な体を、
思いっきりこの胸に押し当てた。


博子、許してくれ…!

「もっと早くこうしたかった。
もっと早くこうするべきだった…」

抱きしめたい、何度そう思ったことか。

ずっとおまえを求めてた。
ずっとおまえを想ってた。


「おまえを忘れたことなんてなかった。
俺にはおまえしか、いなかった」

俺はおまえを…
おまえを…


…言えない。
やっぱり、言えない。


それだけはどうしても。
俺にそんな資格なんて…ない。
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