つむじ風。
「だめよ、絶対。
大学を卒業させる、それがお父さんの夢だったんだから。
希望だったんだから」
「んなこと言ったって、状況は変わったんだ!
現におふくろは身体がボロボロじゃねぇか!
そんなの意味ねぇだろ!
大学なんてどうでもいいよ。
つまんねぇ意地、はんなよ」
「亮二!」
兄貴が間に入った。
「この家売って、信州帰って…
結局伯父さんの世話になるんだろ?
嫌だね、俺は」
「わかって、亮二…」
「大学行かせたいっていうつまんねぇ意地はるくらいなら、人の世話にならねぇっていう意地をはったらどうなんだよ!」
おふくろが俺をぶった。
悲しい目で。
そして震える声で言った。
「お父さんの夢を叶えたいのよ。
立派にあんたたちを育てあげる、
これがお母さんの意地!
実家の兄さんに頭をさげてでも…
それでもあんたたちを大学に行かせる!
それが私の意地よ!」
ああ、そうだ。
親父が死んだのは俺のせいだった。
俺があんなものを
誕生日プレゼントに欲しいなんて言わなけりゃ…
さして欲しくもない、
ただ親父の気持ちを試したかっただけのものだったのに…
忘れてた…
いや、忘れたふりをしてたんだな。
俺が親父を殺したって。