つむじ風。
この世は、金だ、権力だ。
愛?
そんなものは綺麗ごとにすぎない。
典型的な偶像崇拝だ。
結局、金の前で「愛」は「偽り」に変わり、
権力の前で「愛」は「裏切り」に変わる。
そんなものだ。
俺は嫌と言うほど
そんな場面に立ち会ってきた。
だから俺には愛はいらない。
必要ない。
ただひとつをのぞいては…
「おいおまえ、何度同じ失敗を繰り返したら気がすむんだ」
俺はその若い男の周りをゆっくり歩く。
青い顔をしながら、頭を下げ続けるその脚が小刻みに震えている。
「もうおまえは必要ない。去れ」
「それだけは…」
「仕事を覚えられないやつはいらない。指を落とす価値もない。さっさと行け」
「どうかもう一度」
「だめだ」
ガックリと肩を落とす男。
俺はトップへの道のりを歩み始めた。
新しい組事務所をもらい、あのマンションも引き払った。
そしてもうあの河を望むこともない。
未練も、
心の迷いも、ない。
前を向いて歩いて行くだけだ。