つむじ風。
「でも…」
「もう亮二さんは、ただの幹部ではありません。
他の組に狙われてもおかしくない立場になられたんですから」
「大げさだ」
「そんなことありません。
どうか、送らせてください」
「いい、一人で帰れる。
おまえらは、最後まであの連中がハメをはずさないように、しっかり見張っとけ」
そう言い残し、
俺は煌びやかなネオン街を抜けて、
ビルの合間の小さな公園で足を止めた。
細い幹の桜が一本。
なんとも頼りなさげだが、花を咲かせている。
もうこんな季節か…
あっという間だな…
外灯に照らし出された、桜の花びらはまるで雪のように白い。
思わず近寄って見上げる。
春は…嫌いだ、昔から。
気が付いた時には、
春なんてなくなってしまえばいいのに、と思っていた。
なぜか、無性に孤独を感じる季節だったから。
なあ、博子。
…元気にしているか?