つむじ風。

その日は、雲一つない青い空が
どこまでも果てしなく続いていた。

「今月の収支報告ですが…」

直人の言葉を遮り、俺は時計を見た。

「すまない、昼から総長に呼ばれている。
報告は移動しながらでもかまわないか?」

「もちろんです。お車の用意を…」

「今日はいい」

「は?」

「今日は車はいい。歩いても知れている」

「ですが…」


こんなにいい天気なんだ。
たまにはいい、青空の下を歩くってのも。


事務所のドアを開けながら、俺は連中に言った。

「帰るのはいつになるかわからない。
今のうちに訊いておきたい事は、訊いておけ。
電話をかけてくんなよ」

一人が、土地の買収計画の件で書類を差し出した。

ざっと目を通す。

「今日中に電話をくれ、とのことです」

「直人、おまえが先方にこの件の確認をしておけ」
と命じる。

「亮二さん、あと先代の総長の法要の件なんですが」

そうか、もうそろそろ準備をしなきゃな。

「浩介、それはおまえに任せる。
みな、浩介の指示どおりに動け」

< 184 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop