つむじ風。
その日は、雲一つない青い空が
どこまでも果てしなく続いていた。
「今月の収支報告ですが…」
直人の言葉を遮り、俺は時計を見た。
「すまない、昼から総長に呼ばれている。
報告は移動しながらでもかまわないか?」
「もちろんです。お車の用意を…」
「今日はいい」
「は?」
「今日は車はいい。歩いても知れている」
「ですが…」
こんなにいい天気なんだ。
たまにはいい、青空の下を歩くってのも。
事務所のドアを開けながら、俺は連中に言った。
「帰るのはいつになるかわからない。
今のうちに訊いておきたい事は、訊いておけ。
電話をかけてくんなよ」
一人が、土地の買収計画の件で書類を差し出した。
ざっと目を通す。
「今日中に電話をくれ、とのことです」
「直人、おまえが先方にこの件の確認をしておけ」
と命じる。
「亮二さん、あと先代の総長の法要の件なんですが」
そうか、もうそろそろ準備をしなきゃな。
「浩介、それはおまえに任せる。
みな、浩介の指示どおりに動け」