つむじ風。
逃げてゆくその背中が、ぼやけた。
俺の胸が地面にたたきつけられる。
「亮二さん!」
抱き起こしてくれた直人が、半泣きで俺の名を呼ぶ。
なんだよ、そんな顔すんなよ。
まるで俺が、助からないみたいじゃねぇか…
そして俺は自分の腹を見た。
…ああ、これはもう無理…だな…
とめどなく溢れ出てくる血を見て、
そう思った。
情けねぇなぁ、俺。
ここで終わりかよ…
おまえにあんなにカッコつけたのによぉ…
腹からは真っ赤な血が湧き出てくる。
その血の色が、
俺を紅に染まる川面へと導く。
『新明くんの右手、蝶が留まってるみたい』
センスねぇなぁ、おまえ。
もっといいものに喩えろよ。
何だか可笑しくなって、空を見上げた。
その透き通るような青が、
次は俺をあの海へと連れて行く。
『取ってサングラス。
こんなのかけてたら、海の色も空の色もわかんないじゃない』
ほんっとにおまえはいちいちうるせぇやつだな。
俺には眩しすぎるんだよ、おまえも…こんな世界も…
あまりに眩しくて、俺は目を閉じた。