つむじ風。
暗くて何も見えない。
それでも声だけは俺を追いかけてくる。
『私ね、ずっとあなたが好きだった。
でもその想いも今日で終わりにするの。
本当に終わり…』
博子…
俺は必死にポケットをまさぐった。
指先に触れたものを、やっとの思いで取り出す。
思い出すな…
初めて交わした言葉に、
内心胸が高鳴ったこと。
おまえのその声に包まれたくて、
ずっと前を歩いてたこと。
振り向くといつも向けてくれる笑顔に
ホッとしたこと。
何も告げずに姿を消してしまった春を
この身が悶えるほどに、後悔したこと。
自分の心を偽って、夜毎違う女を抱いたこと。
再会した時の、
どうしようもない後悔と愛おしさの葛藤。
いけない、と
危険だ、とわかっていても会わずにはいられなかった日々。
なぁ、博子。
俺ってつくづくバカな男だったな…
今わかったよ、ちくしょう…