つむじ風。
俺たちは信州に…
おふくろの実家に行くことになった。

おふくろは身体を壊して働けなくなっていたし、もう頼るところは伯父さんだけだった。

なぁ、博子
おまえにそのことを言えなかった。
どうしても言えなかった。

明日言おう…
そう思ってても、
おまえの笑った顔が
俺の決心を萎えさせた。

その笑顔を少しでも長く見ていたかったから。

言えば、おまえはきっと最後まで
あのブサイクな顔になる。

せっかく、まあまあな顔してんのによ。

…もったいねぇだろ…?

「兄貴…」
意を決して俺は言った。

「プレゼント…って
何をあげたらいいんだ?」

「は?」

勉強机に向かっていた兄貴が
驚いた顔で俺を見る。

「女の子にか?」

プレゼントっつったら普通そうだろうが…
いちいち聞くなよな。

「まぁ…」

「おまえが?」

「……」

「プレゼント?ホワイトデー?」

意地悪そうに笑う兄貴に
俺は苛立った。

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