つむじ風。
おまえにこんなものは渡せない。
俺はおまえを残して、飛び立つんだからな。
「そうか…」
じいさんは再び手を動かし始めた。
沈黙が流れる。
俺は頭を下げると、店を出ようとした。
「だからこそ、彼女にこれをあげなさい」
その力のこもった言葉に
俺は何も言えなかった。
「好きなんだろ?
じゃあこれをあげなさい。
身体が傍にいればいい…
そんなもんじゃないはずだよ。
身体は一緒にはいられないけど、
気持ちは…心は傍にいるよ、
それだけでも十分なんじゃないかな」
じいさんはてきぱきとそれを包んでくれた。
気を利かせたつもりか、
包みには「WhiteDay」と書かれてある。
ホワイトデーか…
渋る俺の手に
じいさんは小さなその小箱を握らせた。
「君の想いが届くように祈ってるよ」
「あの、お金…」
季節はずれのサンタは
顔の前でオーバーに手を振ると
「いらないよ、そんなもん」と言った。
不思議なじいさんだ。
改めてそう思った。