つむじ風。
「ったく、藍子もあんな男と結婚するからこんな目に遭うんだ。
あんなに反対してやったのによ」
俺の足が止まる。
「まぁ俺としちゃあ、あんなろくでなし、
死んでくれて、せいせいしたけどな」
プツン…と心の中で
細い何かが切れる音がした。
もう止められなかった。
「…んだと!てめぇ!!」
あいつの肩をわしづかみにすると、
俺は思いっきりその顔をぶん殴った。
スローモーションを見ているかのように
あいつの身体は宙に舞い、
そして畳の上に落ちた。
伯母さんの悲鳴が家中に響き渡る。
兄貴とおふくろがとんできた。
「亮二!!」
「…おまえよくもやってくれたな!」
のそのそとあいつが起き上がり、
充血した目で俺に近付いてくる。
「伯父さん!」
「兄さん!」
兄貴とおふくろが、間に入る。
俺はただあいつを睨んでいた。
親父が死んで、せいせいしただと?
「すみません!伯父さん!
亮二には俺からよく言ってきかせますから!」
あいつはそんな兄貴を振り払うと、
今度はおふくろの頬をはたいた。
小さなおふくろは当然吹っ飛ぶ。
「おい!何すんだよ!」
「母さん!」
「藍子、よく聞け!
ここにいたかったら、あいつの籍から抜けろ!
新明の姓を捨てろ!」
「兄さん」
表情はわからなかったが、
おふくろの声は確かに震えていた。
「恥だ!そんな名前をいつまでも名乗りやがって!
その上、あんな男の子どもを、二人も産んだ!
目障りなんだよ!
特にあいつ…亮二だよ。
あの男にそっくりだ。
あいつを見てると気分が悪くなる」