つむじ風。
第2章~穢れゆく手~
なぁ、博子。
この街にも確実に秋が来ていて、
公園で夜を過ごすのは
だんだん厳しくなってきた。
兄貴からくすねた金と、バイト代があったが、
すぐに底をついた。
とりあえず年齢をごまかして
日雇いの仕事についた。
朝指定の場所で待ってると、
迎えの車がやって来る。
いろんなことをした。
工場での資材の搬入の手伝いやら、
建設現場にも行った。
ただの力仕事だ。
頭を使うわけでもなく、人とコミュニケーションをとるでもなく、ただ黙々と言われた作業をこなす。
拘束時間12時間、日当7000~8000円。
仕事内容に到底見合わない賃金だったが、仕方ない。
身体中が悲鳴をあげていた。
あんなに剣道で鍛えていたはずなのに。
朝起きる時、全身の痛みで、
思わず唸ってしまう。
そうやって何日かしのいだ。
なぁ博子。
惨めだ、自分が情けなくなる。
俺には何の未来も見えやしない。
だけど、おまえに会いたい。
とてつもなく
おまえに会いたかった。
今にはじまったことじゃない、
ずっと想ってた。
ずっと会いたいって…
だからこの街に舞い戻ってしまった。
おまえと同じ空を見ていられる、
おまえと同じ風の冷たさを感じられる…
それだけで一緒にいられる気がしたからだ。
馬鹿だろ、俺…