つむじ風。

体を強張らせ、
俺は校門に釘付けだった。

どれくらいそうしていただろう。

「バイバイ、またね」

あれだけ騒がしい中で、
その声だけはクリアに俺の耳に届いた。

博子…

間違いない。

伸びた髪を後ろでひっ詰めて、
そしてますます女らしい体つきになったおまえ。

笑顔で友達に手を振る。

あの笑顔も変わってない…

そう思った矢先、
おまえの顔から一瞬にして笑みが消えた。

寂しそうで、頼りなさげな顔…

ひとりでうつむき加減で帰っていく。

にこやかで、まぶしいくらいのオーラが
おまえから消えてしまっている。

「…博…」

足が前に出なかった。

動揺してた。

久々に見るおまえが
知らないやつみたいだった。


当然おまえは俺に気付くことなく、
ポニーテールを揺らしながら帰っていく。


その時のおまえに抱いた感情を
俺はうまく説明できない。

ただ、二度と戻って来ることのない遠ざかる雲を、

なすすべもなく、

そしてやるせなく見ていた…

そんな感じだ。

< 45 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop