つむじ風。
体を強張らせ、
俺は校門に釘付けだった。
どれくらいそうしていただろう。
「バイバイ、またね」
あれだけ騒がしい中で、
その声だけはクリアに俺の耳に届いた。
博子…
間違いない。
伸びた髪を後ろでひっ詰めて、
そしてますます女らしい体つきになったおまえ。
笑顔で友達に手を振る。
あの笑顔も変わってない…
そう思った矢先、
おまえの顔から一瞬にして笑みが消えた。
寂しそうで、頼りなさげな顔…
ひとりでうつむき加減で帰っていく。
にこやかで、まぶしいくらいのオーラが
おまえから消えてしまっている。
「…博…」
足が前に出なかった。
動揺してた。
久々に見るおまえが
知らないやつみたいだった。
当然おまえは俺に気付くことなく、
ポニーテールを揺らしながら帰っていく。
その時のおまえに抱いた感情を
俺はうまく説明できない。
ただ、二度と戻って来ることのない遠ざかる雲を、
なすすべもなく、
そしてやるせなく見ていた…
そんな感じだ。