つむじ風。
ふと、足元で枯葉を震わせる
小さな小さな風に気付いた。
そう、いつか見た
つむじ風。
去って行く雲を引き戻すなんて
到底できない弱々しい風。
臆病で、決しておまえに触れる
勇気も資格もない、そんな風。
俺はその微かに舞う落ち葉を踏みつけた。
一瞬でその葉は微動だにしなくなる。
ほら、見ろ。
そんなちっぽけな風なんだ。
なぁ博子。
おまえにはやっぱり短い髪がよく似合う。
その方が、おまえの黒目がちな瞳が
よく引き立つ。
俺、前にそう言ったこと、なかったか…?
なぁ…
博子…
俺はずっと逃げてる。
兄貴やおふくろからも…
そしておまえからも。
逃げ癖がついちまったんだな。
そのほうが楽だって、
傷付かなくてすむって…
わかっちまったんだよ。