つむじ風。

ふと、足元で枯葉を震わせる
小さな小さな風に気付いた。

そう、いつか見た
つむじ風。

去って行く雲を引き戻すなんて
到底できない弱々しい風。

臆病で、決しておまえに触れる
勇気も資格もない、そんな風。

俺はその微かに舞う落ち葉を踏みつけた。

一瞬でその葉は微動だにしなくなる。

ほら、見ろ。
そんなちっぽけな風なんだ。



なぁ博子。
おまえにはやっぱり短い髪がよく似合う。

その方が、おまえの黒目がちな瞳が
よく引き立つ。

俺、前にそう言ったこと、なかったか…?

なぁ…

博子…

俺はずっと逃げてる。

兄貴やおふくろからも…

そしておまえからも。

逃げ癖がついちまったんだな。

そのほうが楽だって、

傷付かなくてすむって…

わかっちまったんだよ。


< 46 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop