つむじ風。

俺は夜の町に出掛けた。

ネオンが煌めくこの街で、
俺は雑踏に飲み込まれそうな感覚に陥いる。

「おい、待てよ」
若い男に呼び止められた。

「今ぶつかったろ?
何も言うことねぇのかよ」

俺は鼻で笑った。
今時、こんな言いがかりが通用するかよってな。

「何がおかしいんだよ」

相手は一人かと思えば、
餌に群がるハイエナのように
次々と俺に寄ってくる。

怖いとは思わなかった。

もうどうでもよくなっていた。

よくいう自暴自棄ってやつだ。


「こっち来いよ」

人気のない細い路地に連れ込まれる。

薄暗く、ちょうど建ち並ぶ飲食店の裏口にあたる道だ。

換気扇から油の匂いが吹き出し、
ゴミ箱からは生ゴミのすっぱい匂いが漂う。

「金、全部置いてけよ」

5、6人はいた。

だが、その中の一人は煙草をふかしながら、
積まれたビールケースに腰かけていた。

俺がちらりと見ると、
そいつはすぐに足元に視線を落とす。

こいつがリーダーだな。
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