つむじ風。
「俺とやろうぜ、一対一で」
「金が欲しかったんだろ。
早く持ってけよ、面倒くせぇ」
「腰抜けが」
その言葉に、ピクッと髪の毛が逆立った感覚があった。
「その顔が気にいらねぇんだよ。
自分だけ不幸ですって顔がよ」
「…んだと?」
「どうせ何もかも世の中のせいにしてんだろ。
そんなんじゃ、女もついてこねぇよ」
今日見たおまえの後ろ姿が浮かんだ。
「…うるせぇ!」
俺はカッとなって、
その男を押し返した。
「いいじゃん、その意気」
売られた喧嘩を買うなんて
馬鹿馬鹿しいと思う。
だけど、この日に限っては違った。
この想いのやり場がないんだ。
絶望感でいっぱいだ。
この男が言う通り、
何もかも世の中のせいにしたかった。
俺たちは交互に殴りあった。
まず男が俺を殴る。
次は俺が男を殴る。
「痛ってぇ…
おまえ意外と力あんだな」
と笑いながら相手は言う。
手が痛くなったら、次は蹴りを入れる。
相手が動けなくなるまで、延々と続けられる。