つむじ風。
なぁ、博子。

俺が河原で聞いたことがあっただろ?

他の雲と離れて、ひとつだけぽつんと浮いてる雲の名前、知ってるかって。

そしてらおまえ、マジな顔で
「羊雲」って。

思わず笑っちまったよ。

ああ、こいつ
とりあえず知ってる雲の名前言ったな…って。

「はぐれ雲っつうんだよ」

じゃあおまえは
一瞬悲しそうな顔をした。

なぜだ?
なんであんな顔をしたんだ?

まさか俺とその雲を
重ねあわせたからか?

深読みすんなよ…

と言いたいとこだけど、
あながち間違いではないな。

博子。

おまえはあの頃から素直だった。

思ってることはすぐに顔に出て…

俺とは正反対だ。

だから俺にはおまえが必要だったのかもな。

あんなガキだったのに。

マセてたな、俺。

でもおまえが隣にいると
居場所ができたみたいでホッとしたのは確かだ。

こんな俺に何の心の構えもなく接してくれる…

唯一の「友達」だった。

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