つむじ風。
これがツヨシさんとの出会いだった。
俺よりも2歳年上。
兄貴と同じか…
ふと思った。
ツヨシさんは中卒で、トビをしている。
あの夜以来、俺たちは急速に仲良くなった。
なぜだかわからない。
ただあの人には
俺を惹き付ける何かがあった。
ツヨシさんは俺に職を紹介してくれ、
住む場所も探してくれた。
俺は彼と同じトビで
夜には爆音を轟かすメンバーの一員となった。
仲間もでき、次第に俺にとっての「居場所」ができた。
夜の暴走はとにかく気持ちいい。
赤信号を突っ切る時の痛快さ。
転倒寸前までバイクを倒す緊張感。
そして何より
パトカーの追跡に快感を覚えた。
そんなある日、ツヨシさんが俺を誘った。
どこに行くかは言わない。
だから俺も聞かない。
着いた先に、女が二人待っていた。
長い髪を丁寧に巻き、
香水の匂いが鼻をつく。
ツヨシさんは、そのうちの一人の女の腰に手を回すと言った。
「亮二、そっちの彼女について行けよ」
そして俺の耳元で囁いた。
「男にしてもらえって」
「……」
ツヨシさんはさっさと女と姿を消す。
残された俺は、ポケットに手を突っ込んだまま、踵を返した。
「待って」
俺と同じ、置き去りにされたもう一人の女が俺の腕をつかんだ。