つむじ風。
それからのことはあまり覚えていない。
朝の光で目を覚ました時には、
昨晩の服装のままだった。
久々に頭が痛かった。
飲み過ぎたな…
その自宅マンションに直人を一人、呼び出した。
「調べてほしいことがある」
直人は口が堅い。
それを信じて俺は頼む。
「葉山博子という女を調べてくれ」
「わかりました」
何も訊かずに、直人は言った。
二日ほどで調査結果がまとめられた用紙が
テーブルに差し出された。
「…仕事関係ですか?」
「まあな」
「でも…」
「なんだ?」
「いえ、結果を見ていただければ
わかることですから」
ソファーにもたれながら、
俺はそれに目を通した。
ああ、そういうことか…
「直人、このことは誰にも言うな。
先に事務所に行ってろ」
俺はリビングの窓から、遠くに見える河を望んだ。
高いビルに遮られて、
まるで切り取られたかのように
ほんの少し青い川面が見えるだけだ。
それでも十分だ。
このマンションの最上階に住むのは、
あの河を見るためだ。
ここからなら、いつでも見える。
ふいに溜息が出た。
「皮肉なもんだな。
よりによって、刑事とかよ…」
誰もいない殺風景な部屋で
俺は力なく笑った。