つむじ風。
第3章~諸刃の剣~
駅前の小さな喫茶店。
目の前には一人の女が座っている。
俺はまずこの間の夜の非礼を詫びた。
どことなく落ち着かない様子で
「ううん、そんなことないよ」
とおまえは言った。
ここに着てから、一度も俺と目を合わせようとしない。
「元気、だったか?」
俺は訊いた。
目を伏せ、少しはにかんだように。
そういう表情に女は弱い。
あまり見せることのない一面に、
おやっと思うからだ。
「うん、元気だったわ」
思った通り、おまえから嬉しそうな笑みがこぼれた。
「本当に久しぶりね」
「ああ」
たわいもない話を2つ、3つしたところで、
俺は本題を切り出す。
「会えないか?」
真っ直ぐに女の目を見る。
突然の言葉に動揺したのだろう、
おまえの目が完全に泳いだ。
その口元が動く前に、もう一押しする。
「ここで待ってる」
そう言って待ち合わせ場所と時間、
俺の携帯番号を記したメモを差し出す。
「久々に会えたんだ、話さないか?」
「でも」
「会ってくれないか」
低く、訴えるように言う。