つむじ風。
おまえは明らかに困っていた。
当然だよな、
旦那は刑事で、俺はヤクザだ。
「無理、行けない」
そうくると思った。
「ごめんなさい」
想定内だ。
だが、確実におまえの気持ちは揺れている。
俺は視線を窓の外に移した。
このあたりで少し引いてみる。
「謝ることはない。
おまえにはおまえの立場がある」
そう言って、席を立った。
「…新明くん」
慌てたように俺を目で追う。
ほらな、食い付いてきた。
もう一押しだ。
「待ってる」
続けて、俺はこう言い残す。
「待ってる。おまえが来るまで俺は待つ」
メモをそのままに、喫茶店を出た。
あえて返事を訊かないまま、去る。
悩む時間を与えるために。
そして、会いに行かなければ、俺をずっと待たせてしまう…
そんな申し訳ないという気持ちを引き出すために。
おまえは必ず来る、そう思った。