つむじ風。

何日かして、
俺はおまえの携帯に電話した。

長い呼び出し音の後に、ためらいがちの
「…はい」
という小さな声が聞こえた。

「博子、会いたい」

単刀直入に伝える。

「…あ、あの、でも…」

反論する隙を与えず、続ける。

「明日12時に、この前と同じ場所で」

何も返ってこない。

「会いたいんだ、待ってる」

「…うん、わかった…」

しばらくして、諦めたような声が受話器から聞こえた。

もう俺の誘いに、抗うことをやめたかのような感じだった。

順調だ。
このままおまえは俺の術中にはまっていく。

電話を切ると、自宅リビングの大きな黒革のソファーに身を委ねた。

このまま明日…
いや、まだだ、まだ早い。
失敗は許されない。

最終的な目標は警察だ、博子個人じゃない…


そして俺は直人と浩介に
その日も早く迎えに来るように指示した。

< 79 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop