つむじ風。

すぐさま、その場を立ち去る。

今のおまえを見ていると、腹が立つ!

俺はおまえの心をうまく操っていると思ってた。
目的のためには、おまえだって騙す。

でも、博子…

おまえは何の邪心もなく、何の悪意もなく
俺の心をかき乱す。

あの頃を思い出させて、だ!

封印したはずの「あの頃」を蘇らせて、だ!
この俺を感傷に浸らせる!

過去なんていらねぇんだよ。
おまえと過ごした日々なんて、邪魔なだけだ。

今の俺にとってはな…


その日も、家まで送るという申し出を断って、おまえは電車で帰るという。

「気をつけて帰れよ」

そんな俺の言葉に、ふふっと笑った。

「気をつけて、なんて初めて聞いた」

そう言って視線を落としてあの仕草をした。
頬にかかる髪を撫でるあのクセだ。

照れているような、それでいた困ったような複雑な顔つきで。

その理由が俺にはわからなかった。

「じゃあ、私これで」

「またな」

「…うん」

時間が経つごとに
おまえの警戒心が解けていくように思えた。

まるで雪が融けていくかのように…

もう少しだ…
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