つむじ風。
ふと顔を上げると、大通りから外れた細い裏通りに足を踏み入れていた。
ああ、ここは…
昔、この通りにあった小さな宝石店に、
サンタクロースみたいな風貌のじいさんがいたな。
そんなことを思い出しながら、記憶を辿る。
あんな店だ。
じいさんも死んで、店舗自体もなくなってるだろ。
そんな予想は見事に外れる。
信じられないことに、まだ残っていた。
客もろくに来ないだろうに、
店のショーウィンドウは当時と同じように、
きれいに磨かれ、光を放っていた。
「おいおい、マジかよ…」
あれから15年以上も経つというのに、
よく残っていたものだ。
俺は興味本位で店の中をのぞいた。
中には初老の男性が、何かを磨いている。
きっと今の店主だろう。
あのじいさん、くたばっちまったか…
そう思っていると、その店主が気配を感じて顔を上げた。
目が合う。
気まずい雰囲気のまま、
俺は仕方なく会釈をした。